千里眼ゴアヘッド

文・鎌田浩宮

東京都目黒区駒場4-6-8
03-3481-5773
11:00~14:30
17:00~21:45
水曜定休
https://twitter.com/senrigaaan

 

二郎インスパイア系の雄が作りやがる、
ド変化球の冷やし中華を、
未曾有の酷暑の中、
喰らいに行ぐ。

 

 

先日、東京・東北沢の千里眼へ、冷やし中華を食べに行った。
二郎系のラーメン屋は、どこも恐ろしく愛想がないことで知られておるのだが、この店は違う。
気配りがあり、敬語を使う。
行列で1時間並んでも不愉快にならなかった。

だけんじょ、今回は新人のバイト君が多いせいか、オペレーションがうまくいっていない。
並んでいたのに、整理券を持っていないからと列の後ろに並び直させられる客がいたかと思えば、整理券がないにもかかわらず、席で食い始めた客もいる。
激しめのラーメンオタクがいれば、暴動になっておるだろう。

 

 

イチローが年間200本安打なら、
年間160杯を自分に課す、ラーメンバカ鎌田。
この冷やし中華は、
毎年食わなきゃ、死んで舞う。

 

そんな中、酷暑の中を数十分並び、やっと店内に入り、そこでも待たされ、やっとカウンターへ。
近くの席のカップル。
男はアジア系の外国人で、日本語が不便だ。
既にラーメンは着丼しているが、何かの無料トッピングを欲している。
だが、日本人の彼女には、それがなんだか分からない。
懸命に、そのラーメンへ何かをふりかける仕草を繰り返す。
以前いたベテランの店員であれば、なんらかの応対をしていたはず。
しかし、バイト君にはその場を切り盛りするだけで精一杯だ。

「それ、背脂だと思うんですよねえ…」
俺の口が、勝手に動いた。
すると、その女の顔が輝いた。
「そうです!背脂です!」
どうやって翻訳するのかは知らんが、女は男に夢中で伝えた。
おお、それだよそれ!男の表情が晴れる。
そして、バイトの店員へ背脂を足してもらった。

 

 

ラソーダ監督にゃ、
ドジャーブルーの血が流れとる。
バカマダにゃ、
ラーメンブラウンの血がうっ血しとる。

 

一方、俺の左にいる若者は、かれこれ数十分も冷やし中華と格闘している。
連れの友人は、かなり前に食い終わって、外に出てしまった。
こんなに量が多いと思わなかったんだろう。
二郎という食い物が、これほど苦しいものとは。

でも、残した方がいいぞ。
さもなきゃ30年後、俺のようなデブになるぞ。

 

ほっしゃんみてぇに
鼻から麺出してこそ、本物だ。
そんじょそこらのネトウヨ芸人と
一緒にしてもらいたくねえな。

 

右隣の若い娘も放っておいちゃならない。
この娘は、店員が整理券を説明しなかったためにもらい忘れ、熱帯夜の中並び直されたうえ、席が足りないために、連れの娘と離れて座らされておった。
連れの娘はよろしくやっておるんか…お?
変化が目に入るや否や、俺の口が、またもや勝手に動く。
「そっちの席空いたから、この娘そっちに移動していいよね!」
右隣の娘は、びっくりしている。
「いいよいいよ、行きな。一緒に食べたいもんな」
まだ口が勝手に動く。

俺はこの店へ何しに来たのだ。
オペレーション係か。
ホール担当か。

店員もバイト君も、俺より年下だ。
客のほとんども、俺より年下だ。
俺は50歳だ。半世紀生きたのだ。
どこへ行っても、年下ばかりだ。

爺だから、出しゃばるぜ。
言いたいこと言うぜ。
俺のおむつを替えてくれ、oh yeah.

 


2018.07.26

千代の湯ボンバヘ

文・鎌田浩宮

ドライヤーは、
股間に当てておけ。
三軒茶屋、千代の湯。

 

三軒茶屋駅に着いたら、高速道路のある国道246号線を、駒沢方面に向かって3分ほど進む。右手に、駐車場のような奥まった砂利の空間がある。目を凝らすと、奥へ進むようになっておる。千代の湯と書かれておる。

 

東京都世田谷区三軒茶屋2-12-7
営業開始時間 午後4時前後
営業終了時間 午前1時?
電話 03-3410-2535

 

 

できたのは、大正?
ここに移ったのは、1934年?

 

先日、久々に千代の湯へ。
三軒茶屋最古参の銭湯の1つ。

何時に開くか、分からない。
今日は開けないのか?帰ろうとすると、開いた。
夕方4時。
自然光に頼っている。
あまり蛍光灯を点けないのか、暗い。
暗い中で見つめると、古い銭湯だと分かる。
手入れは最低限だし、塩素の臭いがする。

子供の頃から見慣れた、愛想のない婆が、番台に上がり、電気をつける。
番台と脱衣場に、1台ずつブラウン管型のテレビが置かれておる。

風呂の掃除には、婆以外の人手が必要なはず。
誰に掃除をさせておるんだろう?

ジンセー初の、銭湯1番風呂だ。
カランの水をひねると、ぬるい。
水道管の中で、温まっているんだろう。
30℃くらいか。
一方、カランの湯をひねると、ぬるい。
猛暑ゆえ、火をあまりくべないんだろう。
35℃くらいか。
こうなると、どちらをひねっても、変わりない。

 

石っころが、
鎮座しとる。

 

ほっとした。
今日は、湯船にバスクリン入れてない。

千代の湯の特徴は、に面した壁面へ「ほこら」と言おうか牢屋と言おうか、そんなものを設け、その中に石っころを置いておる点だ。
子供の頃から嘘っぱちだと思っているのだが、その石はラジウム鉱石だとかなんとか但し書きされておる。
そこへ湯船から湯が流れ込む形になっており、我々はラジウムの染みこんだであろう湯に浸かることができるんである。

そんな有り難えもんがあるのに、数年前訪れた時は、深緑のバスクリンをこれでもかというほど混入させておった。
普通のお湯がええのに、とため息をついたんだったが、本日はただの湯だ。

 

 

2018年の夏は、
さすがにぬるめの湯。

 

地元の爺が数人、入ってきた。
桶は洗うんだが、けつの穴やきん玉は洗わないで湯船に入る。
これは、まだましなのだ。
以前来た時は、しゃぼんのついたままで湯船に浸かろうとした爺がいた。
既に、ぼけているんだろう。

いつもは高い湯船の水温だが、この猛暑なので、さすがにぬるくしてある。
爺は、もっと熱くなきゃと口を揃える。
俺は相槌を打つが、熱けりゃ爺が死ぬかも知れんとも思う。

素晴らしいのは、サウナが無料なことだ。
入り放題。
しかし、千代の湯には水風呂がないのだ。
カランの水で冷まそうとするが、今日は30℃だし。

俺ぐらいの年齢が入って来だした。
ちゃんと体を洗ってから湯船に入る。
若い方が、マナーを知っている。

 

 

夕方4時半、
満員に近くなってきたど。

 

いつもは1時間いるんだが、45分で出る。
脱衣場は、あまり冷房が効いていない。

爺が、ドライヤーにカネを入れた。
お洒落な爺だなと思って眺めていると、風を脇の下に当てておる。
そん次は、股間だ。
爺も、暑いのだ。

目の前の貼り紙に気づいた。
カネを入れないでマッサージチェアに座るなと書いてある。
そりゃあそうだ。
千代の湯に通い始めて約40年、ようやく小銭を貯められるようになった。
生まれて初めて、銭湯のマッサージチェアを使ってみる。
1970年代、もしくはそれ以前と思しきチェア、20円。

小銭がないので崩そうと番台へ行くと、婆は寝ていた。
申し訳ないが、叩き起こす。

20円、入れる。
しっかり動くじゃないか。
だが、全く気持ちよくない。
肩に当たるはずの機械拳が、背中に当たる。
高さ調節は、できない。
なので、ぐっと背をかがめて、無理やり方に当たるようにする。
だが、全く気持ちよくない。

 

 

ここにしか、ないんじゃないか。
古い、効かない、マッサージチェア。

 

カネはうだるほど持っておるので、隣にある1980年代のチェアにもトライ。
こちらは100円。
ふくらはぎや尻なども揉む仕掛けだが、これも全く気持ちよくない。
シートの内側の、鉄板が動いている。
仕掛けとしては、それだけだ。

番台の婆が死んだら、この風呂もなくなるのか。
いや、それよりも、千代の湯がある三角地帯(三軒茶屋2丁目、駅前から国道246号線・世田谷通りで区切られた一帯。戦争直後は闇市だった。その名残で、今でも木造の飲食店がバラックのように密集しとる)の再開発も実行されそうだ。
そうなれば、ここはビルになる。
笑っちまうのは、そのビルには大型スパも入るとか。

http://www.sakuraiminoru.com/archives/1015

三茶が風情よりもカネを優先しだしたら、もう終わりだ。
とある世田谷区議会議員のツイッターに、お願いですから再開発しないで下さいと書き込んだが、返信はなかった。

 


2018.07.23