読者賞発表・エプスタ随筆大賞

編集・鎌田浩宮

 

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」
大賞を発表する前に
まずは読者賞を発表します

 

 

Twitter上で読者による投票を行い、以下の通りとなりました。
投票期間:2020年10月20日~27日
総投票数:40
うち無効票:2

1位 老人と笑み 10票
2位 首から上の世界は… 9票
3位 ヴィラ・コーポ笹野101号室について 7票
4位 我が家の家電製品 5票
5位 我が家の困った習慣変わるかなあ 3票
6位 昭和四十五年九月十七日木曜日 火山、川、犬、人のことなど 2票
7位 自転車泥棒 1票
7位 ミラノの奇蹟 1票
9位 江戸Σ 0票

 

事前の予想を大きく覆し「老人と笑み」が、読者賞受賞となりました。

よくよく考えてみると、現役銀行マンによる内情の口外なんである。逆探知さえしない怠慢警察への、告発ズイヒツでもある。筆者は課長のようだが、上層部に知られたら、解雇なんではなかろうか?減点至上主義の企業における、体を張った、決死の筆払い。

そして、老人は何に対して笑うのか。何に対して、笑う価値を見出しているのか。私たちはいずれ、老人になる。あまり遠くないその時に、私たちは何に向かって破顔するのか。偽物の子供に騙され会話を交わすことに、私たちは喜び恍惚するのだ。

番場正志さん、この度は誠におめでとうございました。読者賞を祝して、地球の真裏のウルグアイの手作り陶器のオウムを贈呈いたします。

 

 

読者賞受賞「老人と笑み」著・番場正志さんより

「このたびは読者賞などとたいそうなものをいただきありがとうございました。エントリー番号が早かったため、みなさまが投票していただいたのだと思います。また機会があれば、ぜひ読んでください。ありがとうございました。」

 

 

ブログ・エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
エプスタ随筆大賞
応募締切:2020年10月11日(日)
ジャンル:随筆
形式:Microsoft Word または googleドキュメント
   ペンで紙に書いて、または点字などの郵送も歓迎です
枚数:制限なし
テーマ:以下の6つの中から選び、応募下さい。
   ・お楽しみはこれからだ
   ・おれは悪くない
   ・三等同僚
   ・死ぬのは奴らだ
   ・ビッグトゥモロウ
   ・耄碌と恍惚
賞品/賞金:後日発表
賞一覧:・大賞
    ・投票による読者賞
    ・裸の大賞
    ・若大賞
    ・青大賞
    ・のんき大賞
    ・Mr.BOO!ギャンブル大賞
審査員:高橋紅(くれない)
    高橋基(もとい)
    スズキスキー
発表:2020年10月吉日
応募先:info@epstein-s.net @を半角に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで

 

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応募作品#1 老人と笑み
応募作品#2 我が家の困った習慣変わるかなあ
応募作品#3 自転車泥棒
応募作品#4 ヴィラ・コーポ笹野101号室について
応募作品#5 我が家の家電製品
応募作品#6 昭和四十五年九月十七日木曜日 火山、川、犬、人のことなど
応募作品#7 江戸Σ
応募作品#8 ミラノの奇蹟
応募作品#9 首から上の世界は…


2020.10.28

応募作品#9 首から上の世界は…

編集・鎌田浩宮

 

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」
終盤に差し掛かりました。
SMAPも小林幸子も美川憲一も北島三郎も和田アキ子も
出終わって
大好きな綾瀬はるかさんがダメ押しで嚙み倒して
孤独のグルメはどうなったんだチャンネル変えよか変えまいか
そんな時分になりました。
そろそろ、さよならです。

 

 

題:首から上の世界は…
著:梨乃
テーマ:耄碌と恍惚

 

 ∮       §       ∮       §       ∮

 

「ちょっと、梨乃ちゃん
“ハンケチ”と”バッグ”とって。」

ハンケチとバッグを渡すと、祖母はバッグからファンデーションと口紅を取り出し、鏡に向かってファンデーションを塗りたくる。
祖母は鏡がよく見えていないので、ファンデーションはまだらで浮いて層ができ、口紅ははみ出ていた。
ちょいとホラーだ…

でも、その表情を鏡越しに見ると、うっとりと、そして満足気な祖母がいた。
(やっぱりホラー!)

ある日から「籠の鳥」となった祖母。
籠の鳥になった祖母の唯一の楽しみは
私たち家族が会いに行き、近所のマックまで祖母を散歩に連れて行くこと。

せいぜい1時間、週に2回の。

(籠、と敢えて言いたい。
祖父が亡くなってから90歳までの20年を気ままにひとり生きてきた祖母からしたら、籠なんだもの。籠に入れたのは私たちなんだけれど。)

ハンケチとバッグのやりとりは、散歩の前の祖母の高揚なのだ。
そしてこのやりとりは私でなくても、娘である叔母や嫁である私の母が行っても、同じように毎週毎週繰り返されていたことで
そして叔母も母も、その時間がかなり苦痛なようだった。
毎週、毎月、何年も。

なぜなら、現実の祖母はというと
首から下は…歩けないしトイレも自力でできない、
服は常に食べこぼしで汚れて侘しい状態だった。

籠の鳥の日々は、一日が非常に長い。曜日の感覚も失う。
起きて着替えて、寝るときにまた着替えるなんてことは普通のことだし、
生活のリズムを作るものではないか。
籠では、もちろん最初はやってくれていたことが多かったが、
どこの籠もそうなのだろう、人手が足りなくなっていく。
元気いっぱいに話しかけてくれていた人が1ヶ月後には目も合わさないくらい疲弊している。
家族に代わり下のお世話を毎日してくださっている、
そんな中で強く言えないこともたくさんあった。

でも、、汚れたら着替える、寝る前に着替えることさえしてもらえないなんて。
汚れていたらこちらで着替えさせていたが、
洗濯物を増やしてしまうし、着替えてもまたすぐ汚してしまう。

「お散歩を優先するならパジャマには着替えさせられません。」
この言葉の衝撃は大きかった。
(介護は点数の範囲なので、こんなことが起きるようだ)

元来祖母はとてもマメで綺麗好き、人一倍気位も高く、
ズボンやリュックを嫌い、フレアスカートとバッグにこだわり
床にも座らず、当然ごゴロ寝でテレビなんてことも一度もしたことない。
いつも籐のソファーに座りNHK-FM のクラシックを聴いていた姿が焼き付いている。
わたしゃ毎日酔っ払って床に寝っ転がってお笑いなんぞみてガハガハしているけど…

まだらなファンデーションと、はみ出た口紅に満足気な祖母が
トイレに行きたいと言うので連れて行く。
すると「やっぱり出ないからいいわ。」
と言うので、ズボンを履かせていると粗相をする。
(そう、籠に入るにあたり、あれほど拒否して履かなかったズボンの生活になった。)

粗相をしている真っ只中なのに
「ねえ、私の髪の毛ボサボサじゃないかしら?鏡ちょうだい。」

オイオイ、あんた今何が起きてるかご存知ないかい?と言いたくなる。
こちらは汗だくで粗相の処理しているのに。
なんてシュールなんだ…

祖母はなぜだか、常に首から下の出来事は他人事なのだった。

「私家に帰れるわよ。一人でできるから。」
歩けないのに、トイレに一人で行かれないのに?
散歩先のマックで「じゃあここで失礼するわ。」
どうやって一人で帰るの?!

祖母の首から上の世界は
今、目の前の鏡に映る自分の顔
今、目の前の見えるもの
その一瞬と、
遠い遠い過去の記憶
で構成されていた。

現実の自分、、首から下は
祖母にとっては、「ない世界」なのだった。

叔母や母のストレスはここからきていた。
現実を見ない、受け入れていない祖母に憎しみすら覚えていた。

おばあちゃん、ボケちゃったわね…
お漏らしをしているのに口紅をつけたがり、髪の毛の乱れを気にしているその姿を、ボケとして受け入れるしかなかった。
でも私は、これは生きる力なのではないかと思った。
いや、そうするしかないというのか。
下を向いて現実を見たら、生きていくことが辛くなっちゃうから…

ある日
祖母が鏡に向かって無心で口紅を塗っている姿を見た時に
ふと私の子ども時代の記憶が蘇った。

子どもの頃
母や祖母がお化粧をしている姿を見ると、なんともいえない幸福感、恍惚感に包まれた。
それは祖母がわたしの髪の毛を結んでくれている時の吐息にも感じたし
アイロンをかけてくれたり靴を磨いている姿にも。
年下の従兄弟が一生懸命絵を描いてる時の鼻息にも
猫が日向ぼっこをしてゴロンゴロンしている時にもぼんやり恍惚を感じた。

あれはなんなんだろう?

気持ちよくて、心地よくて。
人が集中している吐息に、なぜ自分が恍惚になるのかさっぱりわからない。
わたしってヘン?!
あまり人には言えないことだ…

そんなことを思い出していると、
祖母が
「梨乃ちゃん、わたし髪の毛ボサボサでしょう?ブラシとってくれない?」

正直いうと、ブラシでとかしてもあんまり意味ない髪型になっていたが
祖母は昔から人一倍髪の毛が乱れるのを気にしていた人だったので
「そうね、ちょっととかした方がいいね。」
と言って、とかしても変わらない髪の毛をひたすらとかす。

ふと見た鏡には、恍惚とした祖母がいた。

そして…わたしも。

人から見たら、祖母のそれは耄碌というのかもしれない。
実際、老いは耄碌することなんだろう。

でも、祖母を見ていたら、それは恍惚と表裏一体のよう思えた。

あのお婆さん、ずいぶんと耄碌しちゃったね!

あのお婆さん、ずいぶんと恍惚しちゃったね!?

いずれ自分も首から上の世界に
浸る時が来るのかもしれない。。

その時には、
「梨乃ちゃん、ずいぶんと恍惚しちゃったね!」
って言ってくださいね。

 

 

ブログ・エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
エプスタ随筆大賞
応募締切:2020年10月11日(日)
ジャンル:随筆
形式:Microsoft Word または googleドキュメント
   ペンで紙に書いて、または点字などの郵送も歓迎です
枚数:制限なし
テーマ:以下の6つの中から選び、応募下さい。
   ・お楽しみはこれからだ
   ・おれは悪くない
   ・三等同僚
   ・死ぬのは奴らだ
   ・ビッグトゥモロウ
   ・耄碌と恍惚
賞品/賞金:後日発表
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    ・投票による読者賞
    ・裸の大賞
    ・若大賞
    ・青大賞
    ・のんき大賞
    ・Mr.BOO!ギャンブル大賞
審査員:高橋紅(くれない)
    高橋基(もとい)
    スズキスキー
発表:2020年10月吉日
応募先:info@epstein-s.net @を半角に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで

 

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賞品決定・エプスタ随筆大賞
読者賞発表・エプスタ随筆大賞


2020.10.15

賞品決定・エプスタ随筆大賞

文・鎌田浩宮/名無シー

 

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」
遂に受賞者への賞品を発表します。

 

 

受賞者への賞品は、以下の通りとなりました。

大賞:ペン
投票による読者賞:オウム
裸の大賞:イクパスイ
若大賞:狛犬
青大賞:犬
のんき大賞:ダーラナホース
Mr.BOO!ギャンブル大賞:宝くじ

 

迷った挙げ句、SCHONDSGN の #01を。
大賞には大賞らしい称賛を贈りたいと考えました。

 

地球の真裏のウルグアイの手作り陶器のオウム

 

シンプルなイクパスイ。
カムイや先祖へ祈る際、この先端に酒をふくませ、祭壇に垂らす。

 

スウェーデン、陶器製のダーラナホース。

 

滑石のイヌイットの犬の彫刻。

 

文鎮は、啄木が愛した盛岡天満宮の石馬=狛犬。

 

おそらく、年末ジャンボを授与しようかと!こちらは見本です。

 

名無シー
大賞用のペンです。剣より強いペン。SCHONDSGN 無垢材切削のボールペンは矢張り高すぎてお財布を圧迫するので、フィッシャーのブレットチタンコーティングにしょうと思ったのですが…矢張り、SCHONDSGN #01に決まりました。インクはフィッシャーの宇宙インク!

鎌田浩宮
フィッシャー、テレビで観たことあります。無重力で書ける!「100万ドル以上の巨費を投じて開発した窒素ガス充填の内部均等圧リフィール」という宣伝文句で!


どれか一つの賞によさそうな置物をきのう瀬戸物屋さんで見つけました。直ぐ買えばよかったのですが、他の案なども考えて、その時買わず、今になって未だ残っていればいいなあと思い始めた次第。一点ものとかで、他の人に買われるともう買えないらしいので。

鎌田浩宮
瀬戸物屋さん、嬉しいなあ!ありがとうございます。なんと幸福なウインドーショッピングでしょう。


いずれかの賞の景品に使えればと、スウェーデンのダーラナホースを注文しました。普通のダーラナホースは木製で20㎝位ありますが、これは陶器製で15㎝位の小さなものです。ダーラナホースもロイヤルコペンハーゲンのはスタートがほぼ10万円で、とても手が出ません…。


今から400年も前の、北欧。お父さんが子供に木を彫って作ってあげたものが由来なんですね。今では、幸せを運ぶ縁起物とされている…。ロイヤルコペンハーゲンって、なんだっけ?ああ、陶磁器のメーカー!披露宴の引き出物でいただきたい。


それと、骨董品のアイヌの木彫りの熊を捜しているところです。普通の鮭を噛んでいるやつではない、机上に置けそうな感じのを捜しているところです。


色々と集めていただき、ありがとうございます。北海道・二風谷を最初に訪れた時(かなり前)に売っていた熊の木彫りは、7万円だったかな?買いたかったんだけど、当時はライダーハウスに寝泊まりしてたほどで。バイクの免許持ってないのに…。


世界の様々な場所の呼吸を感じられる物をテーマに探しております。さっき、このシンプルなイクパスイを購入。北海道の木彫りの熊は、神事に使う軽んずべからざる一品となりました。


北海道のお土産屋さんでよく見かける熊の木彫りですが、エプスタでは神の唇にお酒を含ませるための道具=イクパスイをチョイスしました。


啄木お気に入りの狛犬。南部鉄器の老舗の一品で、啄木ゆかりの神社に本物があるそうです。ミニチュア版ですね。啄木の作品にちょいちょい出て来るそうです。受注生産なので半年以上待たされます。受賞者には待って貰いましょう。


南部鉄器!中学の修学旅行が東北だったので、そこで初めて手にしたんです。1983年かな?東北新幹線が開通したばかりで、僕の中学が実験校として東北へ行くことになったんです。だから修学旅行で訪れるはずの奈良・京都には、大人になるまで行ったことがありませんでした。でも、当時は大仏や仏閣のありがたみなんぞ分からなかったので、東北の自然や名産に触れることができて、と~ってもよかったですよ。


さて、随筆のダービーはどうなるか! 心から溢れ出す詩でなくても、滲み出す染みや、忘れた頃に滴る雫のような言葉で、YouTuberを撃破!


さあ、誰が大賞を受賞するのか?僕も名無シーさんも作品を応募しとりますが、審査員は別の3名にお願いしているので、僕らもドキドキしております。失禁間際です。

 

 

募集期間を延長しました。ぜひ、ご応募下さいね。

 

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応募締切:2020年10月11日(日)
ジャンル:随筆
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    ・裸の大賞
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    スズキスキー
発表:2020年10月吉日
応募先:info@epstein-s.net @を半角に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで

 

関連記事 併せてお読み下さいね。
募集・エプスタ随筆大賞
エプスタ随筆大賞のしほり
エプスタ随筆大将のしほり
エプスタ随筆対象のしほり
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応募作品#1 老人と笑み
応募作品#2 我が家の困った習慣変わるかなあ
応募作品#3 自転車泥棒
応募作品#4 ヴィラ・コーポ笹野101号室について
応募作品#5 我が家の家電製品
応募作品#6 昭和四十五年九月十七日木曜日 火山、川、犬、人のことなど
応募作品#7 江戸Σ
応募作品#8 ミラノの奇蹟
応募作品#9 首から上の世界は…
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2020.10.12

応募作品#8 ミラノの奇蹟

編集・鎌田浩宮

 

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」

アクセス数は、5人前後でいい。
伝わる人に、強く伝わればサイコーだ。
最も小さな文学賞を、目指しています。
私たちの「綴方教室」が、今日も始まります。

 

 

題:ミラノの奇蹟
著:鎌田浩宮
テーマ:ビッグトゥモロウ

 

 ∮       §       ∮       §       ∮

 

クラウドファンディングの一件を記した随筆、「自転車泥棒」。

参加店を回っていて、ビルに自転車を停めて、10分後に戻ると撤去されていた。貼り紙を読むと、自治体ではなくビル側が撤去をした模様。私営のビルに、そのような権利はあるのだろうか?1週間後、彼らにメールを送る。内容は、ビルが建つ前そこにあったパチンコ屋とレストランの思い出話。すると、思わぬ内容の返信が。

救いのない随筆で、非難殺到。

ヨーゼフ・ヴォイス、すげえよなあ。中学生の頃から、羨望してました。社会彫刻か。いいこと言うぜ。僕は、似非隠居です。地に足をつけて社会貢献をしている人とは、比べるのも失礼な人物です。クラウドファンディングを始めて数日で、ヘロヘロの耄碌初老。

ただ終盤で書いた通り、このクラウドファンディングはその後、やや好転していったのです。「自転車泥棒」(1948)の次は「ミラノの奇蹟」(1951)ですぞ。

2020年4月20日から開始した、2か月間のクラウドファンディング。5月下旬になり、俄然お金が集まらなくなりました。起床して、メールをチェック。支援金入金の知らせ、なし。朝から極度の鬱。抗鬱剤を飲んで、1日がスタート。体重もばっちり痩せていきます。「コロナ太り」という言葉を耳にすると、羨ましかったものです。

馬鹿な頭を振り絞って、この町にある企業を回り、支援金をお願いしようと思い当たりまして。びっくり。三軒茶屋には200以上の企業がありました。子供の頃から三茶にいますが、目につくのは、飲食店や商店ばかり。オフィスビルは数えるほど。こんなに会社があるとは…。

片っ端からメールを送ります。コロナの中なので、飛び込み営業はいかんです。数日後、支援金を入金下さる会社が出てきました。個人で事務所を構えている方や、最近三軒茶屋で事業を始めた方。ご自身も大変なはずですが、そういった方々からご支援をいただきました。

また、会って話を聞きたいという大きな企業が、ちらほらと現れました。営業マンとして民間企業に勤めていた頃に買ったスーツ(生意気にJ・P・ゴルチエ)とメガネ(生意気だぞヴィヴィアン・ウエストウッド)を久々に着こんで、会社を訪問です。今どきのオフィスの皆さんは、おおむねカジュアルスーツ。自分はもう、石器人みたいなもんです。

営業マンの頃も、そして今も、頭が良いわけではありません。ただ、ウィンウィンという言葉が嫌いなんです。ウィンウィンだってよ。反吐が出る。竹中平蔵のような偽者ケーザイガクシャが、もっともらしくほざく方便です。僕はルーズ(負け)のままでもあなたへ恩を返すといったことを、企業に伝えます。

お金が集まり始めました。この度のクラウドファンディングは、支援額1個口が3000円・5000円・10000円となっています。しかし企業の多くは、数万円単位でご支援を下さいます。そこが、個人の方によるご支援と違うところです。

1929年の大恐慌では、ニューディール政策が有効でした。現在このコロナにおいては、大企業による消費者・自治体・地域への還元・支援が、非常に有効なのではないでしょうか。

一方、参加店にも動きがありました。自発的に、キャンペーンを始めてくれたんです。こりゃあ嬉しかったぞ。

ある1軒の参加店が「私たちのクラウドファンディングのサイトをスマホンで提示し、支援すると言った方に、〇〇の料理を100円で提供」という企画を打ちあげたんです。クラファンに参加していることすら隠した店さえあった中で、どれだけ感激したことか。

さらに、これに同調した別の1軒が、「私たちのクラウドファンディングにご支援下さった方に、無料で〇〇を店頭でプレゼント」と発表。

ただし!この2つのキャンペーン、蓋を開けるとほとんど効果がありませんでした。2店合計で、まさかのたった4名。ふんがー。でも、2軒の心意気が嬉しかった。ようやく僕は、孤軍奮闘ではないと感じることができたんです。

そして、参加店の1軒と知り合いというだけで、お手伝い下さった方がいました。遠方から何度も三茶にお越しいただき、チラシを一緒に配布。食事してそのお店を知りたいと、半日に3軒もメイン料理を召し上がりました。そして期間内に3度も支援金をお振込み下さり、その総額はなんと67000円。地元では決して現われない類の方でした。

タレント、落語家、俳優…三軒茶屋に縁のある著名な方々からも、快くご支援をいただきました。社会活動を行うとすぐに揶揄されるこの国で、名乗り出て下さったわけです。

そんな彼らの居住まいや作品から、いかに学ぶところが多いことか。クラウドファンディングのおかげで、出会えたんです。社交辞令で言っているんじゃありません。

その中で、国際的にご活躍だったファッションデザイナーの方が、先日お亡くなりになりました。病床から、大変な思いでご支援下さったのだと思います。そのことを忘れてはいけません。

2020年6月19日、クラウドファンディング終了。

その後も支援を続けることは、当初から決めていました。コロナウイルスが、消えてなくなったわけではない。持続的な支援がなければ、生き残れないお店が出てくるでしょう。

僕と同じ考えの方が、1人だけいました。

この度ご支援下さった企業の中の、ある社長です。「いくらでも、今払えるお金はある、でも、継続的な支援方法を考えないといけないはずだ」とおっしゃいました。耳を疑いました。彼はそれから現在に至るまで、30食ものランチデリバリーを、毎週参加店へご注文下さるようになりました。

そのランチは1000円相当のものですが、1500円でお買い上げ下さっています。それらは、福利厚生として社員の方々が無料で召し上がります。今もなお社長は、他にも何か地域貢献できることはないかと、打ち合わせに応じて下さっています。

クラウドファンディングが終わり、少しゆっくりしたかったのですが。

コロナの影響で中断していた、駅前の高層マンション建設計画がまた動き始めてしまいました。三軒茶屋キャロットタワー(27階建て)の隣に、16階と12階の2棟が計画されています。周辺は木造家屋がほとんど。日陰になっちまうし、キャロットタワーと共鳴しビル風悪化を生じます。現在、近隣住民の方々との打ち合わせに日々追われています。

実家の老猫が体調悪化し、ずっと看病していたんですが、7月に旅立ちました。僕が背中から点滴を注射すると、具合がよくなり一緒に遊ぶまでになっていたのですが。ここでまた、体重が減っていきました。

そして、本業のライターの仕事をいただきました。かなり大量の原稿を書くことになり、7月から8月の1か月間は、ほぼ缶詰でした。

そしてついに、閉店に追い込まれそうな参加店が出ました。先に書いた社長が、尽力下さいました。連日夜中まで経理を洗い直し、損益分岐点を導きました。さらには、資金面での援助をするともおっしゃって下さいました。その話は断ったものの、女将さんには笑顔が戻りつつあります。

そんなことを公言する団体はいないでしょうが、このクラウドファンディングの裏テーマは、自殺者を出さないことです。お店を孤独にさせない。1人で苦しませない。ウィンウィンなんぞとは、極北の話です。

世界は、糞味噌に問題を抱えています。地球温暖化、香港やウイグルへの圧政、新自由主義経済による分断と差別。しかし、僕はあまりに頭が悪く、それらに対するアクションのアイデアが浮かびません。一方、自分のすぐそばで困っている人がいて、放置されている。であれば、まずは眼前にある問題に関わっていこうと思っています。そこで学べることがあれば学び、糞味噌な問題へのアイデアを得られれば。

まあ、既にすこぶる耄碌していますので、鼻毛はぼうぼう、頭は禿げ散らかし、ダセえシャツ着古して。アイデアが浮かんだって、誰からも相手にされませんから。同い年の友人が立て続けに亡くなった話を、「自転車泥棒」で書きましたよね。その時、僕のジンセーも9回裏が終わったと思い込むようにしたんです。0対100くらいの大敗です。試合終了なんです。

そうそう!
最近、ようやくコロナ太りし始めました。
今頃かよ!ってな話ですね。
間食も増えたし、外食も増えましたよ。

 

 

募集期間を延長しました。ぜひ、ご応募下さいね。

 

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応募作品#3 自転車泥棒
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賞品決定・エプスタ随筆大賞
応募作品#9 首から上の世界は…
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2020.10.10

応募作品#7 江戸Σ

編集・鎌田浩宮

 

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エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」

随筆は元々、自由度の高いものです。
頭の中で描いたことを書いてもいいし。
過去にあった出来事を書いてもいいし。
つれづれなるままに、筆を滑らせるのですね。
私たちの「綴方教室」が、今日も始まります。

 

 

題:江戸Σ
著:名無シー(原案:Ω)
テーマ:死ぬのは奴らだ

 

 ∮       §       ∮       §       ∮

 

東京は嘗て近世まで江戸と呼ばれていた。
当時、江戸は世界でも有数の大都市だったが、その繁栄の影に「Σ(シグマ)」が存在していたことを知る人は少ない。

Σは、錦の御旗を掲げた薩長の間諜によりその実態を追及されかけたが、Σについて書き記された古文書は、全て上州の楮で漉き上げた水に濡れても絞っても破れない特殊な和紙にしたためられていたので、Σを護る町人達は、その古文書を江戸のいずれかの井戸に投げ込んで秘匿し、今もその井戸がどこにあるのか誰も知らないと言う。
ただ、それが真実ならば、Σは関東大震災も、東京大空襲も掻い潜り生き延びた可能性は高い。

薩長の間諜達は、ウンデット・ニーやソンミ村の如くΣの根拠地を血の海に変えるべく臨んだが、Σの返り討ち──それは敵の攻撃を傘を斜めに傾けてかわしたり、拳一つ分腰を浮かせてかわしたり、敵の間違えを指摘したりせずに寧ろ同じ事をして場を和ませる謎の力と言う人もいる──に遭い、誰一人帰還できた者はなかったという。

その話をしてくれたのは、仮の名をΩとするが、私が昔いた職場の十位年上の先輩で、Ωは嘗てその姿を消したΣの所在を突き止めるべく、東京の井戸という井戸を巡り歩いているといっていた。

まだ平成も始まって間もないある夏の夜、Ωが〓〓区の舌状台地の崖下にある井戸のポンプを、誰にも見つからない様そっと取り外して、井戸の中を懐中電灯で照らしながら、マジックハンド式のタモを差し入れようとした正にその時だった。
崖上に立つブロック塀の上に巨大な満月を背負いスローロリスの様な動物が座っており、両手を器用に使って巨大な虫を貪り食いながらも、その目は完全にΩを凝視していたと言うのだ。
しかも、そのスローロリスは、頭髪をチックでオールバックにしていたという。
あの強い眼力…… Ωは、思い出して語りながらも震えていた。
何らかの強い力を受けたΩの腰は拳一つ分浮かび上がり…… そこまでは覚えているが、その後の記憶が無いという。
ただ、薄れる意識の中で、最後に見たのは、スローロリスの巨大な目と固められた髪、そしてΩの懐中電灯が偶然照らし出したスローロリスの左胸に輝く議員バッジだったと言う。

次に目を覚ました時、Ωは自宅の風呂場で着衣のまま──靴すら履いていた──湯槽の湯に浸かっていた。
しかも、湯は冷めておらず、適温だった。たった今そこに運び込まれたかのように。
キッチンのテーブルにはバラバラになった虫の食いかすが散らばっていて、室内に整髪料の中年臭いにおいが漂っていた。

Ωの話はそこまでだった。Ωはその話をしてくれた後程なく職場を去った。
大分後になって、私は職場を辞めたΩに似た男が、ある議員に秘書として随行しているのをテレビのニュースで見たことがある。
今は鬼籍に入ったその議員は、オールバックで、飛び出そうな目玉がトレードマークだった。

江戸Σの存在を信じるも信じないも皆さん次第だが、一方、真実はとなると、それはただ一つだけなのではないだろうか。

残念ながらその後のΩの行方も、Σの所在も私は知らない。

 

 

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   ・お楽しみはこれからだ
   ・おれは悪くない
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   ・死ぬのは奴らだ
   ・ビッグトゥモロウ
   ・耄碌と恍惚
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    ・裸の大賞
    ・若大賞
    ・青大賞
    ・のんき大賞
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審査員:高橋紅(くれない)
    高橋基(もとい)
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発表:2020年10月吉日
応募先:info@epstein-s.net @を半角に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで

 

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応募作品#2 我が家の困った習慣変わるかなあ
応募作品#3 自転車泥棒
応募作品#4 ヴィラ・コーポ笹野101号室について
応募作品#5 我が家の家電製品
応募作品#6 昭和四十五年九月十七日木曜日 火山、川、犬、人のことなど
応募作品#8 ミラノの奇蹟
賞品決定・エプスタ随筆大賞

応募作品#9 首から上の世界は…
読者賞発表・エプスタ随筆大賞


2020.10.09

応募作品#6 昭和四十五年九月十七日木曜日 火山、川、犬、人のことなど

編集・鎌田浩宮

 

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」

随筆には、色々あります。
日常を描くもの。非日常を描くもの。
現在を題材に。過去を題材に。
私たちの「綴方教室」が、今日も始まります。

 

 

題:昭和四十五年九月十七日木曜日 火山、川、犬、人のことなど
著:名無シー
テーマ:おれは悪くない

 

 ∮       §       ∮       §       ∮

 

昭和四十五年九月十七日木曜日、夕刻から、秋田県中東部の奥羽山脈の山塊の中、秋田駒ヶ岳が噴火した。
噴火の様子は周辺市町村からも確認出来たが、それを目撃した人の思い出話によると、山が吹く火柱は線香花火の「柳」のようだったとも、ただ山が吐く赤い煙を空が映していただけだったともいう事で、皆思い出がそれぞれの記憶の中で色々に形を変えているのかも知れなかった。
同山から直線距離で四十キロメートル程離れた町の東部カンカン内の河岸段丘上の住宅地に建つ古い日本家屋の玄関で、小学一年生の少年が息を潜めて靴を履いている。
少年が夜陰に乗じてこっそり家を抜け出すと、三歳の弟がそれを目敏く見つけ、兄の後を追った。
二人は二百メートル程真っ直ぐ通りを進み、突き当たりの川の神を祀る神社裏、川岸の江戸期からの石垣の上に立った。
既に川端の住人達が暗がりの中に集まってきていて並び立って同じ方向を見ている。
神社裏の川原はグラウンドの様に広々としていて、空が開けて眺望が利く。
山脈の横に広がる黒い影のなだらかな凹凸の一箇所が、線香花火の「柳」の様な火を吹いているか、盛んに赤い煙を立ち上らせ、それが空に返照しているか、どちらかの状態をホログラムの様に交互に思い起こさせる。
火山は一際勢いを増して「柳」を散らし、若しくは煙を増量させ、北国の寡黙な人々も固唾を飲む合間に、「おおっ」と声を漏らす。
本当はそれは「おおっ」ではなく、日本や世界の他の地域の人々には発音できない「お」と「あ」と「う」の間の母音の弱鼻音化した響きだった。
それは橇を引く農耕馬の首に提げる土鈴のコロンとした響きのように、嘗て優しくこの土地の生活全体を包んで来た音だった。
後ろ姿の影絵を紺色の空に浮かべる小さい兄弟は、そんな声があちこちから聞こえる人垣に加わって、今となっては実態のつかめない火柱を見ていたのだった。

その年、その事件の少し前に一家には赤ん坊が生まれていた。二人の兄弟が火山を見に行っている間、赤ん坊は家で寝ていて、もう一人、一歳の幼児も同じ和室で寝ていた。
川端の二人と寝ている二人、それが私達四人兄弟だっだ。
四人兄弟が揃った年の出来事として、その火山の噴火の話を、父母や母方の伯父達から幾度か聞かされた。

川端の道は度々私達の生い立ちの話の舞台となった道で、火山を見ていた二人は、数箇月前にもその川端の道にいた。
末の弟が生まれたとき、その道を五百メートル程も歩いて病院へ行く道すがら、二人は野犬に追われた。
二人が病院に現れたとき、三歳の次兄の顔や手は引っかき傷だらけになっていて、産後で疲れ切っている母を心配させた。
長兄によると、犬はどれ程追い払っても次兄に纏わり付いて離れなかったということだが、本当は小さい野良犬を長兄が次兄に抱っこさせたところ、いやいやした犬に引っかかれたのではないかという疑惑もある。
次兄は真相を全然憶えていない(その四十数年後、嘗て病院があった場所の前の川原の夏草を、火山と同じ山塊の麓の農場の仔羊四頭連れてきて草毟りさせていたところ、たまたま対岸を通り掛かった散歩中のシベリア犬が突然目の色を変え、飼い主のリードを持つ手を振り切って石垣を駆けくだり、川を泳ぎ切るや仔羊四頭の首を次から次へ、あれよあれよという間に咬み千切るという事件があった事を母から聞いた。夏草の濃い緑、羊毛の入道雲のような白、鮮血の真紅。川原はイタリアの国旗のような様相を呈したという)。

犬を追い払うのに失敗はしたものの、長兄は私達弟達の面倒を良く見た。
人と人のことについては必ずしも器用な方ではなく、子供らしく至らないところも多かったと思うが、それでも普段弟達の様子には健気に気を配っていたと思う。
私も次兄も弟も、長兄の同級生達の遊びの輪に加えて貰って遊んだ記憶が多い。
隠れんぼや、当時はまだ宅地の周りに残っていた田圃での虫採り、蛙採り、イモリ採り、蛇観察、川端の神社の縁日に各地から集まってきた的屋の背中の動物観察、野犬からの身の隠し方、自転車の曲乗り、ブロック塀からの飛び降り方、家の門の木戸の屋根からの飛び降り方、小屋の屋根からの飛び降り方(冬季)、自宅の瓦屋根登り(ここからは飛び降りない)など、私達弟は兄の背中を追う中で遊びや危険回避の術、危険への挑戦を覚えて行ったと思う。
中でも私は絵や洋楽など兄と共通の趣味があったので、殊に仲が良かった。
よく兄が、私の書いた絵をアレンジした絵を描いて、私もそれを真似た絵を描くと言う、絵の連歌のようなことをして遊んだ楽しい記憶がある。

そんな兄が家を出たのは高校時代だった。
兄弟達には父方の一族の中で旧家の因習のしわ寄せが多々あった。
更に、まだ戦後の空気の濃い時分で、旧富裕層への復讐心は、学校では教師生徒両方の中に 赤く 燻っていて、兄は随分酷い暴力に晒されていたらしかった。
兄が学校からも家からも距離を取ろうとしたのは、思い起こすと自然な事だったのだろう。
小学五年生位の頃、私が一人で家の留守番をしていると、暫く姿を見せなかった兄が帰って来た事があった。
玄関から入って来たのではなく物置部屋の裏口の扉に秘密の開け方があった。
私は最初、父が連れて来た居候の大学生 山田がまた勝手に他の部屋の棚などを物色しているのではないかと警戒して柱の陰に身を隠したが、本棚の前とステレオセットの横のレコード棚の前に片膝着いて物色していたのは兄だった。
ものの五分ほどもすると、来たことは誰にも言うなと行って、また姿を消した。

その頃の夏、次兄と一度長兄の住む下宿屋を訪ねたことがある。
留守だった兄の部屋の扉の前に瓶のコカコーラと隣室の住人が書いた手紙が置いてあった。
ふざけるな、と言う怒りの手紙だったが、その手紙の下に長兄の書いたそもそもの発端の手紙も敷いてあった。
いつもお世話になっております。よろしければお召し上がり下さい。
隣人が飲もうとしたためコーラの瓶の栓が開いていて、中から醤油の匂いがした。
長兄の、隣人への他愛ない悪戯だった。

その後間もなく、長兄は独り東京に出た。
東京での暮らし向きは学校をドロップアウトした兄には矢張り楽ではなかったが、兄は中学に上がった頃の私に遊びに来るようによく言ってくれた。
出掛けるのはブニュエル等のサイレント映画や、弁士付きのチャップリン等の上映会だった。
何度かそう言う事があった。
当時、田舎育ちの私には、丸ノ内線のプロムナードの同じ一続きの地下街に二つ地下鉄の駅があるなどと言う地方では考えられない驚異などに気を取られ、兄の孤独な奮闘については思いを致す思慮すら無かったが、兄は兄で、田舎では見られない映画等を面白がる私の様子に満足していたところもあったと思う。

しかし、私が高校に上がる頃には私自身が気むずかし屋になり、一方兄は生活苦からか、さる新興宗教に入信するなどして、私達の間には徐々に距離が生まれていった。
私が大学に入る年だったか、正月に帰省した兄は、主人公が歴史の激動の波にもまれて人生を変えてゆくその年話題の映画を例に、人間にはその映画の主人公のような転機が必要なのだ、根底から変わらなければ…… と熱っぽさを噛
みしめるように語ったが、それは既に兄自身の言葉ではなかった。

私が大学に進んだ後、一度兄に誘われて新宿の静かな大衆割烹で飲んだことがある。
兄は何故私が哲学などを志したかを知りたがり、一応私の説明を聞き届ける振りはしながらも、私の説明が済むと、それまでの話を意に介さないように決然と、台本があるかのように突然舌の滑りまでよくなって、どれ程哲学を重ねても結局、宇宙のリズム、真実はただ一つだけなのだと説いた。
兄の布教活動はしかし、ラジカル過ぎる私の前に釣果を上げられず、挙げ句坐礁したようだった。
その夜を境に、兄は私を避けるようになって行った。

正月の帰省も、私とは必ず日をずらして帰ったが、ある時、正月に帰省しなかった兄にアパートの大家が何故帰らないのか理由を尋ねたことがあったそうだ。
兄は、弟に会うと自分が恥ずかしくなる、正月にも田舎に帰りにくいとこぼしたという。

その頃迄に、兄は糖尿病の症状が悪化して行った。
華奢で小柄な人だったが、若い頃から糖尿病を患っていた。
病魔も私の存在と手を携えて兄を気弱にした事だろう。

その兄が今年の春唐突に他界した。
独りで誰にも看取られること無く亡くなったのを大家が見つけたそうだ。
検屍の結果は多臓器不全だった。
糖尿病は重症化し、少し前に心臓のペースメーカーを埋める手術も受けていたというが、兄に避けられていた私は一切を知らなかった。

冷たい雨の日、歩くのがやっとの高齢の母と次兄と弟と私だけで、荼毘に付される兄を慎ましく送った。
長兄の死が何なのか、私達には良く飲み込めない所があった。
病気のことはあったが、昨年の晩秋には帰省して父の墓参も普通にしていたと言う。
車で送迎した弟が手桶に水をくんでくる間、兄は父の墓に何事か語りかけていたそうだ。

その時の様子では、まだ何年でも生きていておかしくないくらいには元気に見えたそうだし、何より死ぬには年齢としてはまだ若かった。
兄が焼き上がるのを待つ間、火葬場のバスケットボールの様にでかすぎる茶瓶から注いだ茶を啜って、皆で昔の思い出を語ってみても、それは兄の生と死を言い当てているような気がせず、何処か空ろだった。
骨を拾うとき、子に先立たれた母は矢張り涙を流していたが、兄の人生とその死が何なのかと言うところになると何だかよく分からない感じがするのは、我々兄弟と同じで、語る言葉が無いようだった。
兄は骨壺に収まって帰省して行ったが、本当に死んだと言えるのか、それはよく分からない。

私は長兄の死後、ずっと長兄の死が何なのか考えていたのだけれど、ふと伯父達が語る火山の話を思い出して、兄達がそれを眺めた神社裏の石垣の川端、そして自由連想的に、そこから川沿いに道を歩いて行った、私達兄弟全員が生まれた大病院の事を思った。
幼かった長兄は、次兄と私と弟の出生時、いつも病院に駆けつけ、生まれたばかりの私達を見た。

新生児室の中に沢山寝ている赤ちゃん達の中のあれが弟。隣はよその子。
手を結んだり開いたり少し動いた様に見える次兄と私と弟の最初の日の様子を兄は見ていた。

そう思うと、少しだけ兄の死の一部を理解出来たような気がした。

戦争も体験した高齢の伯父達が大往生を遂げたとき、わたしは、人は死ぬと裏表紙が付いて本棚の空きの幅の中にすっぽり収まるようだと思った。
生きているときはその人生は何処かに収まりきってしまうものではないけれど、死ねばその物語に始まりと終わりが切られて、全部が何処かに入ってしまう。
しかし兄の死は長さが中途半端で、途中から新興宗教の紋切り型の言葉を再生する精神の空洞化もあったから、どこか本に出来ない浮かばれなさを感じさせた。
それでも、幼稚園から小学校低学年の頃の兄が川端の道を歩いて病院迄やって来て、生まれて直ぐの私達を見守ったことは、兄の物語の混乱と挫折と長い空白のページをも物語として受け入れさせるに十分な足跡なのだと思われた。
未来のノンブルがあるだけで、生きられなかった白いページですら、残された弟達の物語を支えているのだと今は思う。
私達弟一人一人の本が、本棚に並び切る時まで、兄の本は本棚に収まることは無いだろう。
私達の人生の枝葉は今この時も、兄が新生児室に見た胚の展開を生きている。
その全てを弟達の誕生日に病院に駆けつけた兄だけがまず最初に見届けたのだ。
私達弟それぞれの誕生日は皆そう言う日なのだと思う。

 

 

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2020.10.08

応募作品#5 我が家の家電製品

編集・鎌田浩宮

 

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政府が、ダメダメです。
そんな状況なので
こっちの方が楽しいよと
コモンな遊び場を提案していきます。
さあ、随筆大賞です。

 

 

題・我が家の家電製品
著・鎌田浩宮
テーマ・お楽しみはこれからだ

 

 ∮       §       ∮       §       ∮

 

先日、ヴィデオデッキ(ハードディスクレコーダー)が壊れた。テレビがデジタル化となるので、それまで使っていたアナログ対応デッキが使えなくなり、2011年あたりに買い換えたものが、ついに壊れたのだった。購入してから、9年か…。

NHK-4Kで面白そうな番組もやっているし、今回は、思い切って4K対応のデッキを買った。渋谷のヤマダ電機。店員さんに相談するのも好きだし、ポイントの他に沢山おまけをつけてくれるので、他社ネット通販とかよりも安くなると思う。今回も、電卓を度々叩いて安くして下さった。確か前も、おまけで洗濯洗剤をいただいたんじゃなかったかな。

帰宅して、色々試してみて、やっぱりそうだった。

我が家のテレビはブラウン管なので、RCAピンプラグしか差し込めない。今回のデッキには、RCA出力はない。映像出力はHDMIのみだ。

このテレビは、長持ちしている。中学3年(YMOが散開した1983年)の頃、母と弟で今のマンションに引っ越してきて、そこから使い続けているものじゃなかったかな。

その後、母と復縁して父戻る。高校1年。
その後、2度目の離婚。父が家を追い出された。20代前半。
その後、弟が結婚をしてこの家を出た。20代中盤。
その後、母が再婚をしてこの家を出た。20代後半。
そして僕だけがこのマンションに残り、今日まで暮らしている。

記憶がしっかりしていないんだが、1983年からこのテレビだったとすると、37年使い続けている。

自転車で、最寄りのコジマ×ビックカメラへ。HDMIとRCAを中継できるコンバータがあった。無理やりに売りつけず、「ちゃんと映るか保証できませんよ」と親切におっしゃって下さったが、これに頼るしかない。買った。帰宅してつなげると、画角が16:9ではなく4:3に変換されてしまったものの、映ってくれた。

ブラウン管で、4K映像を観る。これが4Kか。4Kをアナログテレビで観るのか。ナム・ジュン・パイクは、我が家の茶の間に在り続ける。全てがやや細長く映るものの、気分がいい。

それにしても、我が家はなぜ、壊れないのだろう。赤ちゃんの頃からある少々の食器。棚。加えて、家電製品が壊れない。

電子レンジは、大学生の時分に買ったものだ。いくら貧困家庭と言えども電子レンジくらい買おうと親に頼んだものだ。これが、壊れない。職場や友人宅で電子レンジを見ると、1分/100gとか、600Wか500Wかと、複雑で使い方が分からない。我が家のものは「レンジ」「解凍」の2つしかボタンがない。あとは、タイマーを回すだけだ。

冷蔵庫も、35年ほど使っていたものだ。一昨年ついに冷気が途絶え、渋谷のビックカメラへ。修理費はどのくらいになりますでしょうかと訊くと「メーカーに35年前の部品はないので、修理はできないかと存じます…」とお答え下さった。言われて、その通りだと思った。35年前の部品など、あるわけがねえじゃねえか。冷蔵庫は、5年か10年で故障し買い換えるんだぞ。お店の方は、巌窟王に説明するかの様だったろう。(これはさすがに買い替えましたよ)

エアコンは、幼稚園の頃(「HOSONO HOUSE」発売の1973年)買ったもので、かなりのフロンガスを吐いていた機種。東日本大震災のあった2011年、冷風が出なくなったと思い、買い替えた。しかし、電気屋さんが取り付けに来た時、驚いた。エアコンは、電源コンセントが抜けていただけだったのだ。本当は、まだ使えたのだ。38年を越えても、使い続けてみたかった…。

先日、東京ガスの方が定期検査に来た。ガスコンロのホースを、無償で取り替えて下さった。さらに、コンロ本体を手入れして下さった。「さっきは炎が赤かったでしょう?根詰まりを除去したので、炎が青くなりましたよ」と、笑顔の検査員さん。こちらも気分がいい。ヤマダ電機の方といい、コジマ×ビックカメラの方といい、ビックカメラの方といい、最近は親切な方ばかりだ。

その夜、ガスコンロをひねると、ガス漏れの臭いがした。一時的なものかと思ったが、漏れは収まらなかった。コロナの事もあり、しばらく放置していた。が、ついに先日、東京ガスの別部署に電話をし、無償で貸出機をお借りすることになった。その際、担当の方は訝しがった。「検査員は、コンロに触れること、修理に関することはしないのですが」と。

定期検査の方は、37年以上前の製品に触れる機会なんぞ、なかったのではないか。しかし、そこでたじろぐことなく、根詰まりを直して下さった。さらば、マニュアル化された世界。本来のサーヴィスとは、検査とは、これだ。Good Morning Mr.Orwell.

だが、他の箇所からガス漏れするようになってしまった。初老の糞爺からクレームまがいの連絡を受け、彼は減給や解雇などされていないだろうか。恩を仇で返すようなことになってしまい、申し訳ありません。

なぜ、エアコンの電源を外していたのか?3月に震災の経験があって、漏電による火災を防ごうと思ったからだった。その時、我が家には浪(なみ)という名の猫がいた。その当時から17年前(細野晴臣監修CD「ecole」発売の1994年)に拾ってきた。息子であり、恋人であり、親友だった。老猫なうえに震災で体調を崩し、頻繁に嘔吐していた。真夏の暑さをどうにかしようとエアコンのスイッチを入れても、作動しない。浪は大丈夫か。気が動転して、壊れたと思い込んだのだ。

あれ?当初は、家電製品の長持ちについて書くはずだった。いつの間にやら、浪の話になってしまった。

僕の同級生のほとんどは、結婚を機に家から独立した。新しい家具や家電製品を買って、賃貸住宅に引っ越した。その親たちも、郊外の分譲住宅を購入し、引っ越した。その際、家電製品を買い替える。気分は一新する。当たり前だが、子も親も、離婚や復縁をそれほど繰り返さない。家は、住み続けない。倅が巌窟王になったりはしない。

僕は、気分を一新しない。浪が亡くなってから、なるべく家の中を変えないようにしている。もったいないとか、ケチだとか、古いものが好きということもある。あと、僕はもう初老で、耄碌しかけている。どんどん、浪のことを忘れていく。なので、なるべく忘れないように、家の中を変えないでいる。気分を一新するよりも、その金で映画を観たりした方がいい。

 

 

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2020.10.07

応募作品#4 ヴィラ・コーポ笹野101号室について

編集・鎌田浩宮

 

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エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
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入稿、入稿、また入稿。
断続的な入稿に、破顔する編集部。
今回は、現時点で最年少の方による作品です。

 

 

題・ヴィラ・コーポ笹野101号室について
著・藤坂鹿
テーマ・ビッグトゥモロウ

 

 ∮       §       ∮       §       ∮

 

ヴィラ・コーポ笹野の101号室では、昨年の冬に住人が死んだ。だから我われ夫婦は、新宿まで直通5分の最寄り駅から徒歩8分、3LDK70平米という何とも好条件なこの部屋を月13万円で借りることができた。

人は皆死ぬ。かならず。人の死んでいない場所などない。もしかしたらわたしだって、この家を墓場にするかもしれない。だから前の住人が家の中で死んだことなど、何とも思っていなかった。広くて陽のよく入る、古いながらも趣のあるこの101号室を愛そうと決めた。2020年5月。春と初夏のまざる、一年で風がもっとも青い季節。

***

結論から申し上げよう。ヴィラ・コーポ笹野101号室に骨を埋める我が覚悟は、入居僅か4ヶ月にして完全に砕け散った。我われ夫婦は残暑のなか発狂寸前で荷造りをし、ヴィラ・コーポ笹野101号室をあっけなく打ち棄てた。

新居は築5年1LDK、お家賃非公開、シーサイドヒルズ602号室。シーサイドヒルズは二重の完全オートロック、しかもセンサーに鍵をかざさなければポストすら開かない。なんとも気品漂うセキュリティ。

ヴィラ・コーポ笹野は、オートロックどころかマニュアルロックも怪しかった(主に窓の立てつけが最悪)。ポストは玄関ドア直結、しかも隙間風が入る。腕を突っ込めば50センチほど家に侵入できる脆弱セキュリティ。うーん、思い出すと、そんなことすらジワジワ腹が立ってくるな……。

なぜ我々はヴィラ・コーポ笹野101号室を去ったのか。それは端的に申し上げて、ここが「住めない」家だったからだ。死んだ元住人の霊が夜な夜な枕元に現れ……のほうが、まだ趣がある。この部屋には「明日」が来なかったのだ。

***

事実は小説より奇なり。

***

引っ越して2週間目の朝、わたしは台所に置いてある石鹸の角が削れているのを見つけた。錐でひっかいたような削れかたをしていたので、気になったものの、「滑って落として削れたのだろう」くらいに思ってほうっておいた。

2日後の朝、起きた夫がわたしを呼んだ。

「おはよう、鹿ちゃん。あのさ、」

「なに?」

「聞きたくない話していい?」

「やだ~~~~~」

「たぶんね、この家、ネズミがいる」

「……ネズミ?」

夫の手にはあの石鹸。見ると、一昨日よりもはるかにいびつに角が削れている。

「これさ、今朝見つけて、なんか変だなって思って、『石鹸 削れてる』でググったんだよね。そしたら、ほら」

夫が見せてくれたスマホの画面には、我が家の石鹸と全く同じ様子の石鹸のサムネイル画像がずらりと並んでいる。その真下に踊る「石鹸のネズミ被害に…」「ネズミにやられました(T_T)…」の文字。

「ネズミって、石鹸かじるの好きなんだって」

全然知りたくなかった情報である。つまり、それは、我々はネズミがかじった石鹸で手を洗い、その手で料理をしたり、コンタクトレンズを入れたりしていたということだろうか。

「100億、無理」

「100億無理だね」

「これは100億よ」

「100億だね」

その場で管理会社に電話をかけ対応を仰いだところ、数日後にネズミ駆除業者を手配してくれるとのこと。本当は今すぐにでも駆けつけてほしいところだが、仕方ない。

念のため石鹸は袋に入れて保管し、台所にはプッシュ式ハンドソープを導入することにした。しかし折悪く天下は大コロナ禍時代。ハンドソープなど、店に並んだ日には一瞬でなくなってしまう。結局ドラッグストアを8軒巡り歩き、似非キレイキレイのボトルをなんとか確保した。

***

我が家に似非キレイキレイのボトルが置かれたその3日後、起床したばかりの夫がわたしに声をかけた。

「おはよう、鹿ちゃん。あのさ、」

「なに?」

「聞きたくない話していい?」

「やだ~~~~~」

「おれたちの寝てる部屋で、ゴキブリの赤ちゃんが死んでる。しかもたくさん」

「……ゴキブリの赤ちゃん?」

夫の指さす先には、数ミリほどの黒い点々。寝ぼけまなこに眼鏡をかけて見てみると、黒と白の縞模様の小さな虫が数匹転がっている。

「朝起きて、なんかゴミが落ちてるな~と思ってさ、よく見たら虫なの。で、『黒白 縞模様 小さい虫』でググったらさ、ほら」

夫が見せてくれたスマホの画面には、目の前に転がっている虫の死骸と全く同じ虫のサムネイル画像がずらりと並んでいる。その真下に踊る「クロゴキブリの赤ちゃん!?……」「クロゴキブリの幼虫が……」の文字。

「100億、無理」

「100億無理だねえ」

「えっと、つまりわたしたちは、クロゴキブリの繁殖の中で眠っていた、と」

「うん」

「ゲボ吐きそう」

「袋あるよ」

「できる男だなあ」

死んでいたのは、数日前にバルサンを焚いたせいだろう。引っ越す前に一度焚き、その2週間後にもう一度焚くと良いとGoogle先生が教えてくれた。調べたところ、クロゴキブリが卵からかえるまでにかかるのはおよそ1ヶ月ほどらしく(ものすごく知りたくない情報だ)、卵にはバルサンが効かないらしい(ものすごく知りたくない情報だ)。

つまり、2週間少し前に入居した我われの不注意で招いたゴキブリが産卵したのではなく、入居前の消毒清掃が十分でなかったために(あるいは、立てつけの最悪な窓から入り込んだゴキブリが清掃後に生みつけて)生き残った卵がかえった、ということだろう。こちとら入居前に消毒清掃費払ってんだぞ。どういうこっちゃ。

その場で管理会社に電話をする。ネズミの駆除業者がゴキブリも一緒に駆除してくれるという。頼む。一刻も早く来てくれ。

***

数日後、駆除業者が来た。家の中を見て回り、床下にも入り、ひとまずネズミが入ってきそうな場所に罠を仕掛けてくれた。これで一安心。明日から安眠できる。

そう思っていたのだ。そのときは。

***

「ねえ鹿ちゃん、見て、ヘビだよ」

101号室、すなわち1階にある我が家には、小さいながら庭があった。夫の指さす方を見ると、70センチほどのアオダイショウが、そろりそろりと龍のひげのあいだを進んでいる。しかしネズミとゴキブリの赤ちゃん騒動直後の我われは、もはや驚く気力を失ってた。

「ヘビだねえ」

「でっかいねえ」

「ヘビ何食べるんだろうねえ」

「ネズミだといいねえ」

「ほんとだねえ」

しかし、よく思い出してほしい。ここは最寄駅から新宿まで直通5分の都会。そんな都会の真ん中に、70センチのアオダイショウ。けれども我われは、ググったり考えたりすることに疲れ始めていた。『アオダイショウ 都会 なぜ』で調べても、Google先生はこの疲労を癒してはくれない。

生活をダイレクトにおびやかすものが近くにいるかもしれない、という不安は、精神をじわじわ蝕む。ネズミとゴキブリに比べれば、家の外をヘビ一匹がうろついているくらい、どうということはなかった。

「ヘビ、かあ」

初夏はすでにその爽やかさを手放し、重苦しい湿気が庭を満たしていた。

***

ヘビが庭を横切ったその日の夜、わたしと夫はコンビニに出かけた。メルカリで出品した品物が売れたので、発送をしに行ったのだ。儲けたメルマネーでコンビニスイーツを買う。これがつつましやかに暮らす我われのささやかな幸福である。片手にティラミス、片手にチーズケーキを提げ、帰路を急いだ。

帰宅して明かりをつける。テーブルの上には、ラップにくるまれたご飯。いつも夜に炊いたご飯は残りをこうして冷まし、冷凍する。

そのラップご飯の端が、ぐちゃぐちゃに食い破られている。

「……!?」

絶句した。これは、この食われ方は、間違いなくネズミだ。なぜ? ついこのあいだ、業者が床下にまで入って罠を仕掛けたばかりではないか。どこかに抜け穴があったのか……?

と思う間もなく、リビングに接してドアを開け放していた寝室から、黒い塊が猛然とこちらに突っ走ってきた。でかい。瞬時に目が捉えたそれは、体長20センチはあろうかと思われるネズミであった。

「うわあああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」

叫んだ。叫んでわたしは、反射的にリビングから飛び出した。玄関にいた夫が慌てて駆けつけてきて、飛び出してきたわたしとぶつかりそうになる。

「どうしたの!?」

「ネズミ!!!!でかい!!!!こっちに突っ込んできた!!!!」

「嘘!?どこ行った!?」

「怖くて見てない!わかんない!」

すぐさま夫がリビングを覗いたが、もうそこに奴の姿はなかった。業者の言葉を思い出す。

「ネズミってね、親指ほどの隙間があれば通れるんです。だから、見つけた次の瞬間は、もうどこに隠れるかわかんない」

***

その日からわたしは不眠症になった。猛然と突進してくる手のひらサイズのネズミは、夢までわたしを追いかけてきた。どこの下水を通ったかもわからないような体で寝室に入りこまれたせいで寝る場所も変えざるを得ず、それが不眠に拍車をかけた。ただただ、怖い。なぜ自分の生活が突然こんなにもおびやかされなくてはならないのか、わけがわからなかった。

不安のない暮らしには、当たり前に明日が来る。ヴィラ・コーポ笹野101号室には、明日が来ない。暮らしへの不安は、人から明日を奪うのだ。

***

不眠症、数週間。時は梅雨。いつしか不眠症をこじらせ、日中に幻覚すら見るようになった身体に、晴れ間のない空はずいぶんつらかった。

あれからまた業者が来てくれた。調べたところ、玄関下から床下に続く穴を通って、ネズミが出入りしていたらしい。穴は木の板で頑丈にふさがれた。そしてネズミはいなくなった。隙間という隙間に殺虫剤を散布した。ゴキブリの赤ちゃんもいなくなった。ときどき、立てつけの悪い外から入ってきたと思しきでかいゴキブリに、100%の殺意でゴキジェットを向けた。わたしの明日を奪う奴は、絶対に、許さない。

梅雨。雨は続く。6月だというのに染み入るような寒さで、わたしはかぼちゃを煮ていた。しとしと降る白い糸を窓から眺める。去年の冬ここで亡くなった人の骸は、無事だったのだろうか。ネズミに食い破られ、ゴキブリに群がられてはいなかっただろうか。その人は、台所に斃れていたという。ラップご飯と石鹸のかじられた、この台所に。

そんなことをぼんやりと思いながら、醤油のボトルを開けて、「あっ」と声が出た。

かびているのだ。醤油のボトルの口元が。

「……?」

なぜ、かびているのか? 醤油のボトルがかびるなど、26年生きてきて初めてのことである。慌てて醤油をしまっていた台所の戸棚を開けて、手近にあるものを引っ張り出し、安否を確認する。

かびている。森永ココアの粉、マリアージュフレールの紅茶、だしの素、乾物、口を開けた調味料。どれにもうっすらと胞子がまとわりついている。絶望して、隣の引き出しをひっくり返す。なんと、中に入っているものどころか、引き出しの底面一面にカビが生えている。

とっさにティッシュでカビを拭おうと、木製のティッシュケースに手をかけて、さらに「あっ」と声が出た。

木製のティッシュケースは、毎日いるこのリビングダイニングに置いてあるにも関わらず、その側面がかびていた。ゾンビに襲われて、仲間に助けを求めようとしたらその仲間がゾンビになっている、B級ホラー映画でおなじみのあの展開を、まさか生きているあいだに体験することになろうとは。

この家は、呪われている。幽霊なんかよりも強烈なものに。

***

台所中の戸棚や引き出しにカビキラーを薄めたものを噴霧して、丁寧にふき取った。それでも調味料やお茶類は、無残にもカビに敗れていった。家中を改めて点検すると、たった2か月半前に押し入れに入れたカバンやコートもかびていた。下駄箱のブーツもかびていた。よく見たら、私室の床にもカビが浮き上がり始めていた。

ネズミとゴキブリの定期点検に来た業者は言った。

「床の基礎がダメかもしんないね、これ」

こうして我われはとうとう、ヴィラ・コーポ笹野101号室を去る決心をした。

***

そこから先はまた別の地獄であった。何が何でも初期費用の全返還と、諸々の被害の補償を望む我われと、管理会社の仁義なき戦い。夫はそうした争いが苦手な人間である。かたやわたしは、生まれながらに阿修羅を背負う人間である。最初、夫だけに名刺を渡し、夫に顔を向けて話していた担当者に「わたしもこの家の主人ですが」と静かなる宣戦布告をしたら、彼はいつしか、メールの本文先頭に、夫よりも先にわたしの名前を書くようになった。

わたしは絶対に一歩も引かなかった。家中のあらゆる証拠と、賃貸物件に関する過去の判例を揃え、契約書を隅々まで読み漁り、万全の交渉の城を築いた。しかし、ただでさえ両者にとってセンシティブな交渉事で、決して怒ってはならない。ましてやパワーで押し切ろうとしてはならない。交渉は、あくまでも相手が気持ちよくこちらの申し出に応じてくれる結果にならなければ、成立とは言えない。阿修羅はそうした美学にもこだわるのだ。美学を守ろうとした結果、ストレスで中耳炎と膀胱炎を発症した。幻覚はひどくなる一方だった。

そして1ヶ月以上ににわたる交渉の結果、ついに我われは完全なる勝利を収めた。しかし、条件付きで。

「8月末までにご退去いただくという条件であれば、初期費用の全額返還及び弁済をするとの意向を貸主様より承りました」

カレンダーを見る。そのメールを受け取った日は、8月13日だった。

***

こうして我われは3つ目の地獄、つまり2週間ちょっとでの引っ越し騒動を発狂寸前で乗り切り、ヴィラ・コーポ笹野101号室を去った。入居からぴったり4ヶ月が経った、残暑の午後に。

引っ越しを終えた日の夜、わたしと夫は近くの中華料理屋で労をねぎらった。

「終わったね」

「むしろ始まった」

「たしかに」

「やっと明日が始まるんだ……」

「?」

「明日が来る家に住めてよかった」

「ほんとうに、そうだね」

我われの明日。それは、なににも脅かされず、安心して眠れる場所にある。明日がこれほどまでにうれしく輝いていた日があっただろうか。

さようなら。ヴィラ・コーポ笹野101号室。わたしは、明日を手に入れました。

 

 

募集期間を延長しました。ぜひ、ご応募下さいね。

 

ブログ・エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
エプスタ随筆大賞
応募締切:2020年10月11日(日)
ジャンル:随筆
形式:Microsoft Word または googleドキュメント
   ペンで紙に書いて、または点字などの郵送も歓迎です
枚数:制限なし
テーマ:以下の6つの中から選び、応募下さい。
   ・お楽しみはこれからだ
   ・おれは悪くない
   ・三等同僚
   ・死ぬのは奴らだ
   ・ビッグトゥモロウ
   ・耄碌と恍惚
賞品/賞金:後日発表
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    ・投票による読者賞
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    ・青大賞
    ・のんき大賞
    ・Mr.BOO!ギャンブル大賞
審査員:高橋紅(くれない)
    高橋基(もとい)
    スズキスキー
発表:2020年10月吉日
応募先:info@epstein-s.net @を半角に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで

 

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応募作品#1 老人と笑み
応募作品#2 我が家の困った習慣変わるかなあ
応募作品#3 自転車泥棒
応募作品#5 我が家の家電製品
応募作品#6 昭和四十五年九月十七日木曜日 火山、川、犬、人のことなど
応募作品#7 江戸Σ
応募作品#8 ミラノの奇蹟
賞品決定・エプスタ随筆大賞
応募作品#9 首から上の世界は…
読者賞発表・エプスタ随筆大賞


2020.10.06

応募作品#3 自転車泥棒

編集・鎌田浩宮

 

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」

コロナ下の随筆を、10年後に読み返す。
そのことを前提として、随筆を書く。
庶民による、2020年のドキュメント。

 

 

題・自転車泥棒
著・鎌田浩宮
テーマ・ビッグトゥモロウ

 

 ∮       §       ∮       §       ∮

 

2019年の5月末に、仕事を辞めました。
仕事をしている場合じゃない、と思ったからです。
2018年から2019年にかけて、同い年の友人が立て続けに2人亡くなりました。
そこで、僕のジンセーも終わったと思い込むことにしたのです。

かといってすぐさま自殺するわけにもいかないので、仕事を辞め、昼は出汁でも取って、4時頃からつまみを作り始め、5時には風呂に入り、6時から広島東洋カープの試合を観て過ごすようにしました。

これがすこぶる楽しくて、持病は治るわ、不眠症は治るわ、暴飲暴食しなくなり体重減るわ、いいこと尽くし。本物ではなく似非隠居だけれど、ジンセー51年目にして、初めて平穏な日々と出会えた気になりました。

年越しをして、コロナウイルスが流行しだしても、あまり苦になりませんでした。去年から極端に外出をしなくなったし、無職なのでそもそも失職しない。生活はあまり変わりませんでした。

しかし!昔から行きつけ、お世話になっている地元のお店が、コロナで売上激減、閉店するかも知れないという状況に陥りました。何かしなければと思いました。僕は、子供の頃からこの町に住んでいます。同級生や、その親御さんが営む店もあります。そこで、4月からクラウドファンディングを起ち上げました。嗚呼、似非隠居のくせに。引きこもってりゃいいのに。

あまりにも金が集まらず、ひっくり返りそうになった。初老でネットに疎いとはいえ、それにしても集まらなかった。参加して下さったお店が、見る間に冷たくなった。協力下さらないどころか、「店内に募金箱を置いた方がましだ」と俺を罵るお店さえあった。

俺が客だった時は、温かかった。仕方がない。女将も主人も必死なのだ。いつ閉店するか分からない状況下で協力して下さっているのに、頼りにならない役立たずなのだ。餅は餅屋にさせておけばよかったのだ。似非隠居がしゃしゃり出るから、こんなことになったのだ。

このままだと、この町にいられなくなるな。金に困って自殺する人の気持ちが、理解できるようになる。クラウドファンディングの期間は2か月だったから、死なずに済んだ。ケツがなかったら、死んでいたかも知れない。

(途中で気付いたのだが、コロナに関して町ぐるみで展開するクラウドファンディングには、特徴があった。数百万円、数千万円集まっている団体・自治体の場合、参加店舗数も多いのだ。したがって、集まった金を参加店舗数で割ると、おおむね10万円前後になるケースがほとんどだった。俺達の場合、集まったお金は少なかったものの、参加店舗も少ないので、10万円前後の金を分配することができた。まあ、言い訳なのだが。)

その日も、自転車で参加店舗を回っていた。ご苦労様と言ってくれる店もあった。別の店では、「大将は休憩中で不在」と店員に言われ、後ろの座敷を見ると、寝ている大将の足が見えた。俺の声が聞こえているにもかかわらず、寝たままだ。起きて挨拶もなかった。妻と思われる女性から、挨拶はない。俺を睨んでいた。そんなに憎いのかと思った。

店の前にはスペースがなく、隣のビルのスペースに自転車を停めていた。10分後に戻ると、自転車がなかった。辺りを見渡すと、貼り紙があった。

「不法駐輪禁止
●〇〇のお客様以外の車両は撤去し1日当たり1万円の必要経費を請求いたします。
●申し出が無い場合は、警察・及び行政機関へ届出をした上で、処分いたします。
※誰かに勝手に置かれたなど事情がある場合、車両の所有者自身で犯人へ損害の請求をして下さい。
※メールの返信には1週間ほどかかります。
※下記メール以外の対応は一切いたしません。
(メール送信が失敗する場合、メールのセキュリティ設定が原因です。ご自身で契約しているプロバイダへ問い合わせて下さい)
※撤去は外部委託している為、各テナント・管理会社・警備室への訪問しても対応できませんのでご了承下さい。
連絡先:〇〇@gmail.com
記述内容:住所、氏名、自転車の防犯登録番号(バイクの場合はナンバープレート)」

中国映画「象は静かに座っている」(2018年)のフー・ボー監督は自殺したが、彼の住んでいた町にも、類似した貼り紙があったのではなかろうか。

かなり疲れていましたが、歩いて帰るしかありませんでした。亡くなった老猫・浪も乗せていた愛着ある自転車でした。

後日もその後日も、クラファンで忙殺されていました。が、数日後、貼り紙に書かれたアドレスへ、メールを送ることにしたのです。

その場所はビルになる前、ビルの事業者がレストランとパチンコ屋さんを営んでいました。

「今から45年前、小学生の頃に家族で訪れ、セットメニューを注文しました。ほたての貝殻の上にグラタンが乗っていて、ハンバーガーもついており、幸せな気分になりました。同じ頃、僕のおじは向かいのマンションで、デザイン事務所を営んでいました。おじの背中についていき、拾ったパチンコ玉で羽根台を打つのが楽しみでした。素敵な思い出をありがとうございます」と結んで、送信しました。

8日後、自転車撤去委託組合という方から、返信が届きました。法的責任に関する難しい長文が続き「同意をしたとみなされるので、安易にこのメールへ返信するな」と書かれていました。

その次に「ここまでは固定フォーマットの文面だ」と断りがあり「正確に確認できないが、おそらく当組合では撤去していない。警察は、盗難届の受取を拒否するかも知れない。しかし、警察は受け取る義務がある。何とかして授受させるべきだ」といったことが、です・ます調で書かれていました。

すぐに区へ問い合わせると、区が僕の自転車を撤去し、保管していることが分かりました。すぐに保管所へ出向き、3000円を払い、返還してもらいました。

コロナで、世界中のお店が経営難になりまして。クラウドファンディングを運営する者・支援してもらうお店・寄付をする者と、弱者同士にもかかわらず全ての関係性が「利用する者」と「利用される者」の2者のみに分別されまして。

そこに忽然として登場した、自転車撤去委託組合。その後、事態はやや好転し、苦しみのないクラファン終了を迎えることができました。自殺する前のフー・ボーの町にも、なぜ自転車泥棒が現れてくれなかったのでしょうか。

クラウドファンディングを、決して人には勧めません。僕の地元だけでも、コロナにまつわるクラファンが複数ありましたが、どこも思ったようにお金が集まらなかったからです。ただ、クラウドファンディングをやってよかったと思っています。なぜなら、クラファンを展開したがゆえの常軌を逸した苦しみよりも、クラファンを起ち上げなかった後悔の苦しみの方が、僕の中では上回ると思っているからです。

 

 

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応募作品#4 ヴィラ・コーポ笹野101号室について
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応募作品#7 江戸Σ
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2020.10.04

応募作品#2 我が家の困った習慣変わるかなあ

編集・鎌田浩宮

 

ブログのくせに長めの事業でこざかしい
エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
「エプスタ随筆大賞」

随筆が、止まらない。
日常を、奪還する。
非日常を、狩猟する。
筆1本で、止まらない。
大賞決定前に、応募作品を1作ずつ掲載していきます。
読めばいいだに!

 

 

題・我が家の困った習慣変わるかなあ
著・表参道が好き
テーマ・お楽しみはこれからだ

 

 ∮       §       ∮       §       ∮

 

仕事を終えて2駅を都営新宿線に揺られて帰宅する。
今日は、帰宅途中にクリーニング屋さんによって、息子と娘の冬の制服を受け取った。
家に帰ると洗濯物を取り込む。お風呂を溜める。
夕ご飯の食材を冷蔵庫を見て考えて夕ご飯を作る。
高3息子、中3娘は夕ご飯を食べたら塾の自習室へ行く。
子ども達の夕ご飯が終わるころにお父さんが仕事から帰ってくる。
お父さんのご飯や晩酌の配膳して、私も一緒に夕ご飯。
食べ終わると、夕ご飯の後片付けをする。
洗濯物を畳む。アイロンかける。
お風呂に入って、少し一息。
そうするうちに息子や娘が帰宅する。
帰ってきた2人がそれぞれにいろいろ話してくれるのでそれを聞く。
お父さんや子供たちがお風呂に入った後に洗濯機を回して、朝干せるようにしておく。
明日の朝のご飯を炊飯器にセットする。
これが、私の近頃の夕方から寝るまでの行動だ。

そして今、わが家の父さんが寝ているベットの足元に置いてあるパソコン前で座布団に座って、カタカタとこれを打っている。

夜中に文章を書くのは久しぶりだ。
私は、1972年生まれの48歳。
高3男子、中3女子のダブル受験生を抱え中で時短勤務の正社員。
四年制大学を卒業し、印刷会社に営業職として就職、結婚して退職、16年の主には主婦生活(パートやアルバイトはしていたけれど)ののち、印刷系のお仕事に復帰して現在3年目をむかえたところ。という、よくある子育てが落ち着いてきたから働きます。教育費もかかるしね、な主婦だ。

今夜、こんな話になった。
中3娘が、
「1999年に男女共同参画法案ができたんだから、にいにはおうちのことを普通にできる男になってよね。」
と中間試験の勉強で仕入れたばかりの知識を使って高3兄さんに言う。
「うちは昭和だもんね~」
と私が言うと、
「そうそう。まじ昭和。」
と兄も妹も声を揃えて言う。

そうなのだ。うちは「お父さんが一番偉い」のである。
だから、お父さんは基本的に家事をしない。
それには事情があるのだけれど、、
兄が未来のパートナーに対して我が家のようであっては、兄のパートナーが大変だ
と思った。
我が家の「お父さんが一番偉い」は、子どもたちが小さな頃、お父さんだけが外で稼いできてくれていたときに出来上がった習慣がそのまま残っているのだ。
昼間は私と子どもで好きなようにしてるんだから、お父さんは、お仕事でくたびれているんだから帰ってきたらお父さんが好きなようにしてあげようね。っていう習慣。

今や、10代の子どもたちも、時短勤務の私も、お外で頑張っているのだから、それぞれおうちでは好きにしたい毎日だ。しかし、この習慣は残ってしまっている。
例えば、お父さんが帰宅するとテレビ権は自動的にお父さんのものになり、休日に在宅の日は一日中テレビ権はお父さんのもので食卓はお父さんの場所。
一緒にいてもつまらない子どもは、部屋にこもり、私は家事をする。
いかにお父さんにこちら側へきてもらうか。子どもたちがもう少し小さな時期に話し合いをすればよかったかと私も少々頭をかかえている。老後2人になった時に、家事をできる人になっておいて欲しい。と。一日中座っていられてはさすがに困る。

それを感じての今夜の娘の一言なのだ。
兄も十分に分かっているので、
「俺はやるよ。家事もするし、けっこう今もしてるよなあ。」
という。
確かに彼は、私がいないときは、雨が降ってきたら洗濯物を入れたり、ご飯の後片付けもしている。
しかし、続けて一言
「でもさあ、男って、女の人より気が付かないんだよね。俺も、かあちゃんが家事してるの見ちゃってるもん。あー、かあちゃんやってんなあ。って。きっと、男ってそうなんだよ。父さんも多分おんなじなんじゃないかなあ。自分から気が付く前に女の人がやってるか、ああ、いろいろやってんなあ、って眺めちゃう。」
とニコニコして言う。
それは確かにそうなのかもしれない。
と思っていると、
妹が
「それじゃあ、男の人は、結局家事やらないじゃん。
私みたいに、ずっと働き続けたい女の人は、どうやって家のことと仕事と子育てすればいいのよう。」
とワーワー言い出した。
私は、娘はそういう人生設計なのかと思いながら
「じゃあ、おうちのことが得意な人や協力できる人をパートナーになったらいいね。」
と娘に言った。
兄は
「今はさ、女性も男性も同じに働けるし、ほら、男女雇用機会均等法、習ったでしょ?
しかも、バリバリ働きたい女性がいる一方で、バリバリは働きたくない男性だっているわけよ。だからバランスとれそうな人がいたらいいんじゃね?俺は、家のことやるからバリバリ誰かに働いてほしい!」
とニヤニヤしているので、妹に
「ヒモかよ」
と突っ込まれていた。

私の育った昭和40年代のモデルのような家庭は、父親が稼いで母親が家を守るタイプが多かった。
今と比べると男女の役割分担がはっきりしていた時代だったっと思う。
それは、教育でも同じで、幼児のころや小学校でも、男の子だから、女の子だからという言葉をつけてしつけられていた記憶もある。女の子だから家事できないとね。っていう感じ。

「男が働いたって女が働いたって一緒に暮らしていくんだから、家のことは一緒にやればいいんじゃね?男と結婚するとも限らないだろうし、結婚しないかもしれないし、違う国の人と一緒になるかもしれなくね?」
という兄の言葉はとてもフラットだ。

わが家には、兄妹の友達が小さな時からたくさん来た。
そのおかげで、10代後半に成長した彼らの世代との交流を私も持たせてもらっている。
それを通じで感じることがある。
彼らはとってもナチュラルなのだ。
ナチュラルとはどんな感じかというと、自分のままでいるという感じ。
10代という男女の性差を大きく感じ、体も心もホルモンの影響をうけ、乱暴になったり、自分ではどうにもならない思いを抱える時期なのに、ストンとそこにいる。
もちろん、思春期に特有の自分をよく見せたかったり、自意識過剰になったりはしているけれど、自分と違う個性の他者を受け入れることができていて、自分の個性も自分で受け入れている。互いに個性を受け入れるゆとりが彼らの世代にはあるのである。
さらに自分の意見もきちんと伝えることができる。
彼らを見ていると、私たちの10代の時はどうだっただろう?
と考えてしまう時がある。
兄妹ともに、地元の公立中学校へ通ったが、女子がスラックスを履いている子もいるし、
ルーツが日本以外の国の仲間もいる。学校に来るのが得意ではない子もいるし、勉強が得意な子、人気者の子、内気な子、いろいろな子がいろいろな個性を持ち寄って刺激をしあっている環境がある。

私たちの10代の頃は、今よりも日本は日本人ばかりだし、男の人と女の人の役割がはっきり決まっていて、学校には嫌でも行かされた。大人は子どもに言うことを聞けといい、反発をした私たちは大人と揉めたり、学校で暴れたりした。話し合いや個性を認めるとういう生活からはまだ遠かったように思う。

もうひとつ、この子たちは私の世代と圧倒的に違うところがある。
それは、無意識でも意識的でも死を意識しているということ。
彼らは、東日本大震災を幼稚園や小学生、中学生で経験し、日常が急に変わってしまうことを知っている。毎年の台風の水害、ミサイルが日本の上空を飛びアラートの鳴る朝を知っている。そして今のコロナ禍。日常はいかにもろくて日常ではないことを知っている。その中で、自分のために、自分の未来のために、自分の大切な人のために、エネルギーを使う。そして、世界ともつながっている。日本だけではなく、世界として物事をとらえている。日常や命は消えることを知っているからこそ、今できることを今しようとする力がある。

彼らは新しい人たちだと私は思う。

私は、「お父さんは偉い」の習慣を兄妹が小さな時にわが家へ持ち込むような、ゴリゴリな昭和の男女の役割を刷り込まれている母親だ。
しかし、兄妹はお互いのパートナーと協力をしあって暮らしを築いていくのだろうと思う。彼らの世代の新しい人たちが、ナチュラルに生活を営み、私たちの生活の中の不自然なところを臆することなく指摘をしていく未来がきっとあるのだと思う。そんなそう遠くない未来はきっと、日本で暮らすことや世界の人が日本にいることが、もう少しラクになる世の中が来るような予感がする。それが楽しみで仕方がない。

私は、まず、お父さんに家のことをすこしずつしてもらえるように作戦を練るとしよう。
そうすれば、こんな夜中にパソコンを叩かなくてもよくなるかもしれない。

 

 

募集期間を延長しました。ぜひ、ご応募下さいね。

 

ブログ・エプスタインズ創刊10周年記念特別事業
エプスタ随筆大賞
応募締切:2020年10月11日(日)
ジャンル:随筆
形式:Microsoft Word または googleドキュメント
   ペンで紙に書いて、または点字などの郵送も歓迎です
枚数:制限なし
テーマ:以下の6つの中から選び、応募下さい。
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賞品/賞金:後日発表
賞一覧:・大賞
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審査員:高橋紅(くれない)
    高橋基(もとい)
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発表:2020年10月吉日
応募先:info@epstein-s.net @を半角に変換して送信して下さい
郵送は〒154-0024 東京都世田谷区三軒茶屋2-20-13-410 鎌田浩宮まで

 

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2020.10.03