第1話「休日の朝」

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明け方5 時、今日も定時か…

ボクのベッドから飛び起きて玄関先までお出迎え。

「なんで朝帰りのヨッパライオンナにしっぽ振って喜んでんだアイツ」と、

ネボケながら思う。枕元の携帯電話で時間を見れば定時の朝5 時だ。

今日は待ちに待った休日、まだまだ寝るぞ。

目黒通りから少し入った、

とあるマンションにボクと、カノジョと、コーギー犬のクリス(♂)は同居、

まあ、世間でいうところの同棲をしている。

25 万円もの家賃は折半。もちろん犬のクリスは除く。

一般的なサラリーマンのボクがなぜそんな高級マンションに住めるかというと、

折半といえども家賃のほとんどはカノジョが出している。

ボクのカノジョはウォータービジネス界のエリートだから。

まあ、簡単にいえば指名やら、同伴、アフターなる高時給に

歩合給まで加算されるキャバクラ嬢なんですね。

そんなこんなで、不規則正しく明け方に帰ってくる訳です。

そんなカノジョを忠犬クリス君は、毎朝お出迎えするのです。

ヒールの足音とボクの数ヶ月分の給料分のケリーバッグから出す鍵の音で

お帰りが分るらしい。

マメで優しい韓国人のオトコやイギリス人の紳士でもそこまではやらないであろう。

だから、そんなクリスはカノジョにとっても愛されている。

比較することではないが、多分ボクよりも…。

日曜日午前7 時起床、快晴

休日とはいえ、いつも通りの時間に目が覚めてしまう。

サラリーマンの悲しい性かな?

クリスに朝食を用意して、ボクは手作りモーニングを食べながら、

ネットでニュースをチェック。

上海万博に、石川遼クンね?

世界中に、いろいろな事件や問題が山ほど報道されているが、

ボク個人にとってはたいした事件もない平穏な1 日。

ところで、今日はカノジョと近所に最近出来たカフェでランチの約束。

起こさないと後でメンドーなので、ボチボチ起こすとするか。

「もう、お昼になるよ、起きなよ」

「…」

「あそこのカフェでランチするんだろ?」

「ウ~ン…」

「だからさあ、起きろよ!起こせっていっただろ!」

「…」

バトンタッチ。クリスおまえが起こせ!オレは知らん。

クリスの顔なめ攻撃にまかせて30 分後ようやく起きてきた。

スッピン。平安時代のオンナか?コイツ。

眉毛のない二日酔いの顔。

このスゲー顔を写メとって勤め先の店長に送ったらどうなるかな?

「…オハヨ」

寝起きにいきなり冷蔵庫あさって、もらい物のケーキを食べ出すカノジョ。

…信じられない。

「よく寝起きでそんなもん喰えるなあ?」

「ン?だって別腹だもん」

って、言葉使い方相変わらず間違ってるコイツ…。

「そんなの食べてないでさ、お昼食べに行くんだろ?」

「ウンちょっと待ってよ」

ちょっとぢゃないよ!風呂に入ってドライヤー、メイク、洋服選び、etc…

ざっと1 時間はかかる。

「クリス散歩行くぞ!」

しっぽを振り、うれしそうなクリス。

ある意味コイツが一番エライ!なんか解ってるよな~いろいろ。

なんて思いながら散歩に出かける。

「ホント、いい天気だなあ」

穏やかな休日かと思いきや、カノジョとの事件?がはじまるのであった。

2010.06.23